「6−4はできるのに、−6+4になると手が止まる」

「3−5を見ると、『これ、引けない』と言う」

「符号がついただけなのに、急に鉛筆が止まる」

宿題を隣で見ていて、そんな場面に心当たりのある保護者の方は多いと思います。正負の数は中1の単元ですが、中2・中3になってもここで手が止まる子は珍しくありません。教われば その場ではできるのに、少し時間をおいて一人でやると、またできなくなっている。

なんとかしてあげたい。でも、自分は解けるのに、いざ「どうやって解くのか」を説明しようとすると、言葉に詰まる。「なんでこれがわからないんだろう」と、もどかしくなる。

先にお伝えしたいのですが、説明できないのが普通です。大人は正負の計算を、いちいち考えずにやっています。考えずにできることを言葉で説明するのは、誰にとっても難しいことです。

この記事では、大人が無意識にやっている判断を分解して、お子さまがどこで止まっているのかを見えるようにします。教え方を勉強し直す必要はありません。

大人は、考えずに解いている

−6+4 という式を見たとき、大人の頭の中では、実は3つの判断が一瞬で終わっています。

  • 「−6」と「+4」のセットだと見る
  • 符号が違うから、引き算だと決める(6−4=2)
  • 数字の大きい 6 がマイナスだから、答えは −2 だと決める

速すぎて、やっている本人にも自覚がありません。だから、お子さまに「よく考えて」と声をかけても、なかなか届きません。考えるための手順そのものが、まだお子さまの中に無いからです。

逆に言えば、この3つの判断のどれで止まっているのかがわかれば、確認する場所はぐっと狭くなります。

子どもが止まっているのは、だいたいこの3つ

いまの3つの判断は、そのまま つまずきの3つの型になります。それぞれ、私が実際に授業で使っている補助プリントの抜粋と一緒に見てください。

① 数字を、前の符号とセットで見られていない

−5+3 という式を、「−5」というかたまりと「+3」というかたまりに分けて見る、という見方がまだできていない段階です。符号がついていない数字にも + が隠れている(6 は +6)ということも、まだ感覚として持てていないことがあります。

補助プリントの抜粋。「数字は、前の符号とセットで見る」のルール。−5+3 を −5 と +3 のセットに分けて見る例
補助プリント「正と負の計算」より

② 足すのか引くのか、が決められない

符号が同じなら足す、違うなら引く、という判断が整理されていない段階です。3−5 を見て「引けない」と止まってしまうのは、だいたいここです。

補助プリントの抜粋。「符号が同じなら足す、違うなら引く」のルール表。5+3 や −5−3、3−5 などの形と計算の仕方、答えが並ぶ
補助プリント「正と負の計算」より。答えの符号の決め方(③)も、この表にまとめています

③ 答えの符号が、決められない

符号が同じならその符号を、違うなら数字の大きい方の符号を使う、という決め方です。途中までは合っているのに最後の符号だけ間違える場合は、ここでつまずいていることが多いです。

補助プリントの抜粋。6−4 と 4−6 の問題に、答えの符号の決め方のヒントが添えられている
補助プリント「正と負の計算」より。迷ったらすぐ確認できるよう、ヒントは問題のすぐ近くに置いています

教科書のやり方で、説明し直さなくて大丈夫です

お子さまを手伝おうとして教科書やノートを開くと、数直線や絶対値といった言葉が出てきます。「まず これを理解させないといけないのか」と、身構えた方もいるかもしれません。

数直線から入る説明で理解できる子も多いです。ただ、ひとつひとつの考え方はわかっても、それらを同時に使って計算するのが難しい子もいます。私が担当した生徒にも、そういう子がいました。考えてみれば、大人も計算のたびに数直線を思い浮かべているわけではないはずです。

ですので、ご家庭でのサポートは、概念の説明を覚え直すことではなく、「計算の型」を一緒になぞることで十分です。たとえば、符号が同じなら、その符号を先につけてから中身を足す。

−12−7=−(12+7)=−19

「絶対値」という言葉も、計算の最中には使わなくて構いません。「数字の部分」「中身」で通じます。

家でできる、止まっている場所の見つけ方

どこで止まっているかは、ご家庭でも見つけられます。6 と 4 だけを使って、次のような式を口頭かメモで出してみてください。

  • 6+4 / −6−4 / 6−4
  • 4−6 / −6+4 / −4+6

数字をあえて変えないのがポイントです。数字が同じなら、計算力ではなく符号の扱いだけを見ることができます。

たとえば、6+4 はすぐできるのに −6−4 で止まるなら、数字を符号とセットで見る段階。4−6 で「引けない」と止まるなら、足すか引くかの判断の段階。4−6 を 2 と答えるなら、答えの符号の段階——というように、手が止まる場所から中身が見えてきます。

ひとつだけお願いしたいのは、これは「できないことを確認する時間」ではなく、「どこまでできているかを見つける時間」だということです。間違えたときに「なんでわからないの」という空気を出さず、「ここまではできてるね」と声をかけるくらいのほうが、お子さまも安心して考え続けられると思います。

見つかったら、やることは小さい

止まっている場所がわかれば、やることは、①セットで見る → ②足すか引くか → ③答えの符号、の順にひとつずつ確認していくだけです。小学校の計算まで戻る必要はありません。

これは「できていない」のではなく、「まだ整理されていないだけ」だと私は考えています。

この順番で整理できるように作ったのが、途中で抜粋をお見せした補助プリントです。解き方のルールを最初に表でまとめ、問題のすぐ近くにヒントを置いているので、保護者の方が説明を用意しなくても、お子さまと一緒になぞっていけます。

補助プリント「正と負の計算」を見る

ほかのプリントは補助プリント一覧にまとめています。ご自由にお使いください。

まとめ

「マイナスがわからない」は、入口の言葉です。その中身は、大人が無意識にやっている3つの判断——①符号とセットで見る、②足すか引くか、③答えの符号——のどこかで止まっている、ということが多いです。

うまく説明できなくても大丈夫です。どこで止まっているかが見えれば、確認することは小さくなります。型を一緒になぞるだけなら、教え方の勉強も要りません。

私は大阪市で、中学生向けの家庭教師をしています。どこから整理すればいいか一緒に見ますので、体験授業からお気軽にご相談ください。